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科学班の恋【D.Gray-man】

第79章 無題Ⅱ



「タップ…タップ…!」



タップの骸骨の頭を強く抱きしめる。
そうして涙塗れの顔を押し付けるから、ジョニー同様涙塗れになっていくタップの顔。



「…タップ…」



真っ黒なその手を、そっと握った。
反応も何も示さない焦げて真っ黒で…大きな、指の太いタップの手。
その手を頬に当てる。
勢いは弱まっても止まらない涙が、目元から伝ってタップの真っ黒な手に触れる。

…ねぇ、タップ。
私の涙も感じてる?

今まで散々荒いスキンシップは取ってきたけど…こんなふうに触れたこと、あんまりなかったよね。

乱暴だけどいつも傍にいてくれた体。
当たり前に隣にいた体温。

当たり前過ぎて……だから気付かなかった。



これは、当たり前じゃなかったんだ。
ラビの涙と弱音で気付かされた。
本当は凄く貴重で、凄く大事なものだったってこと。



「タップ…っ」



口の端が震える。
ぐっと噛み締めても、その震えを止めることはできなかった。

歯を食い縛って俯く。
ジョニーと、リナリーと、リーバー班長と、ロブさんの泣き声を耳にしながら。

頬に当てたガサガサの硬いタップの手を、ぎゅっと握り締めた。






「───」






不意に動きが止まる。






「───え…?」






硬いガサガサのタップの手が、頬に当たるその手が、微かに揺れたような気がして。






…あれ…今……気の、所為…?






「タップ…?」






思わず顔が上がる。

今、一瞬だけど揺れた気がした。
ほんの微かな動作だけど、動いた気がした。

タップの、手が。



涙でぼやける視界の中。
見えたのは、ジョニーの涙と鼻水で濡れたタップの顔。

ボロボロと上から零れ落ちるそれは冷たく硬いタップの骸骨の顔を伝って、眉間から窪みのある目元へと落ちていく。

眼球さえもないその目元に溜まった涙が、ぽろりとひとつ。
タップの白く硬い頬を伝った。






まるで涙を流すように。










「………ジ…」










そうして、僅かに開いた剥き出しの歯の隙間から発せられた音。










「…ジョニ……みなみ…」










それは掠れて濁ったタップの声だった。

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