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科学班の恋【D.Gray-man】

第79章 無題Ⅱ



初めは、恐る恐る。



「……タップ…」



優しく呼びかけるつもりだった声は、思った以上に掠れて震えていた。
そんな私の声がか細かった所為か、タップの体は微動だにせず全く反応を示さない。

…聞こえなかったのかな。



「タップ…聞こえる?私の、声…」



今度は意識して、もう少しはっきりと聞こえるように声を届ける。
AKUMAの爪で裂けた唇は痛んだけど、ぐっと噛んで耐えた。

これくらい我慢しなくてどうするの。
タップはもっと痛い目に合ったのに。



「私……南、だよ…」



ラビに背中を支えて貰ったまま、タップの体に寄り添う。
体は…肌なんてどこも見えないくらいに、全身真っ黒に焦げているから…もし痛みを感じるといけないから。
触れるのは躊躇してしまった。

その真っ白な骸骨の顔にだけ、手を伸ばしてみる。
恐る恐る指先で触れて。

痛く、ないかな…大丈夫かな。

触れたタップの骸骨の顔はひんやりと冷たくて、まるで生き物ではないようだった。
無機質なものに触れているような感覚。

これは本当にタップなのか。
そう、一瞬思わせる程に。



「タップ…終わったよ、全部……AKUMAもノアも…全部、退治したから…もう大丈夫だから…」



それでも。
とにかくタップを安心させたくて、笑いかけた。



「私も…タップのお陰で、こうして…生きてられた、から…」



反応は相変わらずないけれど…死んでる訳じゃない。
タップはまだ生きてる。

だって、ほら。
体は砂になんかなっていない。
崩れていない。
ちゃんと触れられてる。

冷たくても、生き物のように見えなくても。

この人はタップ。

私にはわかるから。



だから、



「ありが───」






"ありがとう"






その言葉は途切れてしまった。






「…っ」



目の前が、滲んでしまって。



…ありがとうじゃないよ。
感謝なんて気持ちじゃない。

私は、タップに取り返しのつかないことをさせてしまったのに。

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