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科学班の恋【D.Gray-man】

第79章 無題Ⅱ



真っ青な大きなビニールシート。
其処には一定の間隔で、何かが並べられていたんだろう。
積もる砂の塊のようなものが見えた。

…ううん、何かじゃない。

砂の塊だけもあれば、あのスカルという骸骨が着ていた服もある。
その服の中から溢れるように積もっている砂。
まるで服の中身だけが砂と化したかのような、そんな光景。

…多分この砂は、元々スカルの体だったものなんだ。
コムイ室長が言っていた"体を保っていられなかった"っていうのは、こういう意味だったんだ。



その中で一つだけ、まだ形を成している人がいた。



真っ黒な焼けて黒ずんだ体。
顔だけは真っ白な骸骨そのもので、仰向けに横たわったままぴくりとも動いていない。

…見間違いなんかしない。
だってずっと一緒だったんだから。

顔も体も普段と違うけど、わかる。






タップだ。






「…あれが…?」

「じゃないと…あんなふうには…」



そのビニールシートから多少距離を置いた場所で、取り囲んだ無数の団員達の好奇にも似た視線と声が届く。



「南。下ろすぞ」

「…ん、」



遠くから届くか細い無数の声。
その上から掻き消すように強く届く、ラビの声。

…ほっとする。

その声だけに集中していよう。
そうすれば、タップだけをきっと見ていられるから。



シートの上に上がったラビが、タップの傍らに私の体をそっと下ろしてくれた。

近付いてみて、改めてわかること。
つんと微かに鼻を突く、人の肉が焼けたような異臭。
…あの時、タップの名前を叫びながら嗅いだものと同じもの。
真っ黒焦げだけど、ずんぐりとした体格や潰れた足はわかる。
…あの時、最後まで私を守りきろうとしてくれていたタップの姿そのもの。

これはタップだ。
見間違えるはずがない。

私が最後にタップを見かけた時と、同じ姿のまま彼は其処にいた。

声も発さず動きも見せず。
生きているのか死んでいるのか。
それさえもわからないような、そんな風貌で。

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