第79章 無題Ⅱ
少し朦朧とする意識。
同じようにまだ微かに歪む世界で見えたもの。
クラクラする頭を抑えたまま、目線を床に落としていたから。
その視界に入り込んでいたのは私のイノセンス、"黒い靴"。
───ヴンッ
そこに突如異変が起きた。
一瞬にして発動が解けて、屈強な真紅のブーツが消え去る。
同時にそれは私の両足首に足輪のような物として出現した。
え…何これ?
「赤い…輪になった…?発動が解けたの…?」
触るとカチンと固い。
感触は極々普通の鉄のような赤い足輪。
だけど…これは私のイノセンス。
元々は装備型イノセンスだったからわかる。
今までとは違う気配、感覚。
これはもう以前の装備型イノセンスじゃない。
私の血でできたイノセンスなら、アレン君と同じ寄生型になったの?
……でもなんだか、寄生型とは…様子が違う気もする………これは寄生型なのかしら…?
「失礼、」
足輪に触れて一人考え込んでいると、すぐ間近で知った声が聞こえた。
顔を上げる。
見えたのは…
「リンク監査官…?」
「先程、アレン・ウォーカーの名を叫んでいましたね」
そこに片膝をついて顔を寄せていたのは、アレン君の監視役のハワード・リンク監査官だった。
「彼は何処ですか?」
「あ…ヘブラスカの間の…北東側の廊下に…っ」
「わかりました。私が彼を上まで運びます。…貴女は行くべき所があります。其処へ」
「行くべき所?」
いきなり告げられた言葉に、意味がわからず問い掛ける。
するとリンク監査官は、少しだけ…表情を暗いものへと変えた気がした。
「それは───」