第79章 無題Ⅱ
タップ
タップ
ごめんね
私の所為だ
私があの時、タップに逃げろと言われた時
素直に逃げ出していたなら
あんなことにはならなかったかもしれないのに
「ッ…タッ…プ…」
会いたい
会って謝らなきゃ
タップに会いたい
「タップ…ッ」
担架の上で、弱い拳を握る。
拳一つ握るのでさえままならない自分の体が、堪らなく嫌だった。
こんなに弱い体だから、タップの所へも行かせてもらえない。
「おねが…タップ、会わせて…ッ」
歯を食い縛る。
また拒否されるんだろう。
コムイ室長の声を聞くのが少し怖くて、目は合わせられなかった。
だから気付くのが遅れた。
「南、悪い。少し痛むさ」
「っ!?」
優しい声が傍で届いたかと思えば、体がゆっくりと浮く。
驚きと腹部の痛みに思わず顔が上がる。
見えたのは、オレンジ色に映える髪。
「ラビ?何して…っ」
「オレが連れてくさ。南をタップんとこに」
「…え…」
ラビだって怪我を負ってるはずなのに、優しく私を抱き上げた腕はふらつくことなくしっかりと体を支えてくれた。
私と同様に驚いた顔で、声を上げるコムイ室長を真っ直ぐに翡翠色の目が貫く。
「タップに会わせた後は、そのまますぐ医務室に運ぶ。それでいいだろ」
「しかし…っ」
「怪我で駄目だとか、手当てがどうだとか、命が大事だとか。そういうことごちゃごちゃ言う暇があるなら、さっさと動くさ。…失ってからじゃ遅いって言っただろ」
最後の声は僅かに低く、ぼそりと告げられたラビの言葉に室長は言葉を呑み込んだ。
なんだろう。
そんな話を、前にしたのかな…。