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科学班の恋【D.Gray-man】

第79章 無題Ⅱ



「私も、行かせて下さい…!つぅ…ッ」

「南っ無理すんなさ…!」



なんとか担架の上で身を起こそうとしたけど、上手く体は持ち上がらなかった。
それでも起き上がろうとすれば、傍にいたラビが制すように手を貸してくれる。

…駄目。
行かなきゃ。
タップの所に。

言いたいこと、伝えたいこと沢山ある。

行かなきゃ。



「駄目だよ、いけない」



だけどコムイ室長の口から発せられたのは、まさかの否定を表すものだった。
思わず体の動きが止まる。

…今、なんて言ったの?



「南くんはその怪我の治療が先だ。気持ちはわかるけど…とにかく先に応急手当てだけでもしないと」



何、言ってるの。
室長。



「それから来るといい」



…それからって。
それでもし間に合わなかったから?
もしタップに会うことができなかったら?



「で、でも…っ」

「気持ちはわかる。でも君の命も大事なものなんだ。それは放っておいていい怪我じゃないだろう」

「…ッ」



…それは…



室長の言うことはわかる。
頭では理解できる。
私の体のことを案じて考えてくれてる。
それもわかってる。

…でも、



「…いや、です…」



声が震える。
上手く体は動かないまま、それでも私の目は室長だけを捉えていた。



「嫌、です。タップに…会わせて、下さい」



怪我の治療の後、タップに会えればそれでいいけど。
でもそれは"理想"の話。

もしここで治療を優先して、タップに会い損ねたりなんかしたら……最後の機会を失ってしまったら。
私は絶対に後悔する。
…室長のことも責めずにはいられないかもしれない。

それだけ、私にとって大切な仲間なんです。

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