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科学班の恋【D.Gray-man】

第79章 無題Ⅱ



焦げ付いた手を優しく握り込まれる。
その見下ろしてくる目は、愛おしそうなものを見ているかのようにも見えた。

……なんか…恥ずかしい。



「……こんな、格好なのに…?」



真っ直ぐに見つめられて綺麗だと褒められれば、照れを感じてついそんな言葉で返してしまう。
軽く笑いかけながら言ったけど、今の私の姿じゃジョークにもならなかったんだろう。
ラビの目が私の体を再度見下ろして、眉を寄せた。



「早く傷の手当てしねぇと…悪ィ南、足止めさせちまって」

「…ううん」



現状を改めて理解したように、冷静さを取り戻したラビの表情が切り替わる。
ああ、この顔はよく知ってる。
書庫室で真面目な顔で歴史の文献を読み込んでいる時と、同じ顔。

す、と呆気なく握られていた手が離される。

…あ。

離れていくラビの体温に、なんだか名残惜しい気持ちになった。



「ラビ」



そこに声をかけてきたのは、リーバー班長の担架の傍に立っていたコムイ室長だった。
名を呼んだだけで、その先は何も言葉を繋げない。
だけど微かに笑みを浮かべるその意図は、どうやらラビには理解できたらしい。
じっと見返した後、小さな声で「ありがとう」と礼を言ったから。



「室長…タップが…」



その時、思い出したようにリーバー班長の声が室長に縋る。
その名にピクリと体が反応した。



「スカルに改造されてしまった奴らがいるんス…あいつらは…?」



…そういえば。
ノアの方舟で連れ去られようとするタップ達を助けに行って…私達はあのAKUMAの腕に襲われた。

タップ達は助け出せたのか。
レニー支部長が結界装置で閉じ込めていてくれてたけど…あれから、どうなったのか。
まさかレベル4の放った衝撃でやられていないか。
無事なのか。

不安が一気に襲い掛かる。



「………」



班長の縋るような問いに、室長はすぐには応えなかった。
じっと黙り込む姿は…もしかして、知ってる、のかな…。

タップ達の現状を。






「……会うかい…?」






沈黙の後、やっと発せられた返事は一言だけ。
ぽつりと告げたその言葉だけで、充分だった。

生きてる?

会うって。

タップは、生きてるの?

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