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科学班の恋【D.Gray-man】

第79章 無題Ⅱ



「っ…ごめ、南……オレ、一回…諦めた」

「……うん」

「南のこと…皆、のこと…死んだんだって…思っちまった」

「…うん」

「ユウは、明確なもん見るまで信じねぇって、そう…っ言ってたのに、オレ…できなくて、」

「…うん」



私の胸に頭を預けたまま、そこから届くくぐもったラビの涙声。
こんな状態じゃ、私の腕で隠していてもラビが泣いていることは周りに伝わってしまう。

でも必死に紡ぎ出されるその声を、遮ることなんてできなくて。
静かに耳を傾けている中で、ああ、と理解できた。

ラビの涙の理由。

私達、第五研究所にいる皆が亡くなったと思ったんだ。
そうして、一度死を迎え入れた。

"仲間の死を認める"

それがどんなに重いことなのか、よくわかったから…ラビの涙の理由をすんなりと受け入れられた。

それだけ苦しかったんだよね。
…それだけ辛かったんだよね。



「…いいよ」



わかるから。
その気持ち。
だから…謝らなくていいよ。



「今は…触れられてるから…涙、感じられて、るから…だから、いい」



抱いた頭から微かに伝わるラビの体温。
温かいその体は、生きている命から貰えるもの。



「…生きてるんだなって…そう、思えるから…」






…生きてる。

私もラビも、生きてるんだ。






「…私…生きてるんだなぁ…」






そう命の存在を強く感じると、なんだか胸が苦しくなった。
ラビが生きていてくれて嬉しいのに。
人が生きてるって、こういうことなんだと思うと目頭が熱くなる。

どうしよう。
声が震えてしまう。

当たり前に日々過ごしていたけれど、やっぱりこの職場は死が近くて。
変わらない皆と変わらない日常を過ごす。
それはやっぱり酷く貴重なことで。

聖戦を行ってる、死が当たり前に充満しているこの世界で、生きてるってこと。
本当は凄いことだったんだ。



…わかってたはずなのに。
漠然と、思い知らされた気がした。

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