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科学班の恋【D.Gray-man】

第79章 無題Ⅱ



ゴウゴウと炎が鳴る。
なのに不思議と、さっきまで耳の周りでうるさく主張していた騒音は響かない。



───トクン



代わりに響いたのは、胸元に押し付けた耳に届く微かな鼓動。
…リーバー班長の、心臓の音。



───トクン



生きてる音。



───トクン



その音を耳にしながら、その人の温もりに触れながら、微かな呼吸音もすぐ傍で感じながら。
私の肩を強く掴んでいた手は、いつの間にか優しく背中に添えられていた。

…温かい。
人の温もりって、こんなに温かかったんだ。



「………」



トクン、トクンと鳴る班長の鼓動にだけ集中するように目を瞑る。
すると、さっきまでのやり切れない思いで溢れていた胸の裂け目が…少しだけ、萎んだ気がした。

…落ち着く。

そういえば…アジア支部への任務の途中でそう思えるようになったんだっけ。
コムイ室長の薬で子供のように小さくなってしまった体で、それこそ本当の子供のように班長の腕の中でわんわん泣いて。
そんな私を受け入れて、一晩中ずっと抱きしめてくれていた。

あの時から不思議と感じるようになった、班長の腕の中の心地良さ。

…あの時は、大きな包容力を感じて落ち着いたんじゃない。
私と同じ、一人の人間としての存在を感じて。
私より年上で仕事もできてAKUMAに対して啖呵をも切れる人だけど、この人は私と同じ普通の人間。
何度もごめんな、と小さな声で私に謝罪しながら抱きしめてくる班長の姿に、そう感じさせてもらえた。

何かを怖いと思ったり、自分に弱さを感じたり。
そういう心を持っている人。

…私と同じに。

"同じ"だと思えることが、こんなにほっとするなんて…あの時まで私は知らなかった。

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