• テキストサイズ

科学班の恋【D.Gray-man】

第79章 無題Ⅱ



情けなく地面を這い蹲ることしかできなかった私を、マービンさんは守ってくれた。
ハスキンさんも私を連れ出そうとして、あのAKUMAの腕に胸を貫かれた。

…私の所為だ。

私がタップを助けてって言ったから。
避難する時はジョニー達も一緒だなんて、偉そうなことを言ったから。

わかってる。
今更そんなこと悔やんだって、自分を詰ったって、なにも変わらないことは。

でも罵らずにいられなかった。
こうしていれば、ああしていれば。
後悔は尽きずに私を責めていく。
責めていないとやり切れない。



「っ…ぅ…」



この夢の中でも溢れて止まらなかった感情を、どこへぶつけていいのかわからないから。






「…南」






名前を呼ばれた。
凄く近くで。

はっとして気付く。
傍にいた、その人の存在に。



「…はん、ちょ…」



顔を上げて見えたのは、傍に座り込んでいるリーバー班長の姿。
私にじっと向けてくる薄いグレーの瞳は、そこに私の顔を映し出すと微かに揺らいだ。
…ような、気がした。



「……体、キツイんだろ」



何か言いたげに、でも何も言わずに口を閉じて。
次に班長が口にしたのは、静かな労いだった。



「座ってるのも、キツイだろ。…俺に凭れてていいから」

「ぃ…いえ、大丈夫、です」



そんな、班長だって怪我してるのに。
首を横に振れば、意志の強いきりりとした眉が僅かに寄った。



「いいから、凭れてろ」



そのまま肩に伸びた手がぐっと掴んで、私の体のバランスを崩す。
力の入らない体は簡単に、傍にいた班長の胸に凭れてしまった。



「班長…っ」

「その顔」

「っ…?」



え?



「今のお前の顔、ジョニーが見たら…心配する、」



今の…顔?

思わず身を退こうとした動きが止まる。
私の顔は班長の煤汚れたシャツに押し付けられたまま。

…どんな顔、していたんだろう。



「だから…このまま、こうしてろ」

「………」



………多分、歪んだ酷い顔をしていたんだろう。

ジョニーを思って言ってくれたのか。
私の為にしてくれた行為なのか。
…多分、どちらも入ってるんだろうな。

班長はいつだって平等に、私達部下に気を配っていた人だから。

/ 1387ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp