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科学班の恋【D.Gray-man】

第79章 無題Ⅱ



ゴウゴウと炎が鳴る。
熱さは全く感じないけど、それはミランダさんの作ってくれた時間の結界があるから。
この透明なドーム状のシールドが消えてしまえば、恐らく一瞬で私達は燃やし尽くされてしまう。

それ程の高温で激しい炎。



「は…ッ」



熱さは感じない。
だけどズクズクと腹部から感じる熱さで、息は自然と上がる。

ミランダさんの傍に皆で固まってじっとしているだけなのに、意識が朦朧とするようだった。

駄目だ…こんな所でまた気を失っちゃ。
また意識なんて飛ばして……またあんな夢なんて見たら。



「…っ」



…見たくない。



最後に見えたのは、白い光に包まれながら笑い合う皆の姿だった。



あれは確かに私の望んだ光景だけど。
私の望んだ皆の姿だけど。

望めば望む程、現実を見た時に辛くなる。
あんな心が引き裂かれる感覚、何度も味わいたくない。



「い!イダダダッ!」

「痛みを感じるのは生きてる証拠じゃ。じっとしておれ」

「だ、だって…ブックマン、痛いって…!」



ブックマンに腹部の怪我を診て貰っているジョニーから悲鳴が上がる。

痛みを感じるのは、生きてる証拠、か…。
……確かに。



「はぁ…っ」



息が上がる。
ズクズクと腹部から感じる熱が増して。
熱は、ある。
じんじんするような、熱い感覚。
でも不思議と、AKUMAに腹部を抉られる前に感じていたあの痛みは感じなかった。

痛みより熱が勝って。
………これ…大丈夫、かな…。



「……っ」



視界いっぱいに広がっている強い光。
その光で視界が霞むようだった。

…駄目、だ。

意識が揺らぐ。
傍にいるミランダさんやジョニー達の姿が、霞むようで───…駄目。
ぐっと歯を喰い縛る。
強く唇を噛めば、AKUMAの爪で裂かれた唇は僅かに痛んだ。

痛、い。

痛いのは、生きてる証拠。

生きてる。



私は、






"…南…ジョニ…と、逃げろ…"






「…っ…」






私は、生きてしまった。
マービンさんを…踏み台にして。

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