第79章 無題Ⅱ
「ジョニ…ッ」
なんとか倒れ込んでいるジョニーの傍に寄る。
上から覗き込めば、その体の酷さは一目見て伝わった。
腹部に止血用で荒く巻かれた、誰かの上着。
それは出血多量によって内側から赤く滲んで染まっていた。
「………」
…こんなにボロボロになってまで、タップを助けようとして。
……ジョニーもタップと同じだ。
誰かの為に、自分の体なんて構わず命を張って……無茶し過ぎだよ…本当に。
「…ぅ…」
「ジョニ…?」
唇を噛み締めて見下ろしたまま。
その小柄な体を引っ張ろうとすれば、小さく呻く声。
咄嗟に顔を覗き込めば、眼鏡の奥の目が薄らと開いた。
「ジョニー…ッ」
「っ…南…?」
私を見返して、確かにその口で私の名を呼んでくれた。
よかった、意識はちゃんとしてるみたい。
「此処……オレ…?…痛…っ」
「それより、ミランダさんの傍に…っ」
「へ?ミランダ…?」
「ミランダさんが、私達を炎から守ってくれてるの…"時間停止"で…なるべく体力を消耗させないように、一ヵ所に固まらないと…っ」
「え?ぅ…うん…?」
まだしっかりと状況を把握できていないジョニーの体を引っ張る。
ジョニーには悪いけど、急いで身を寄せ合わせないと。
ミランダさんのサポートがなにより優先だ。
そうしてなんとか体を引き摺っていると、他にもジョニー同様目を覚ましたらしい。
マリやブックマン達も頭を起こす姿が見えた。
よかった…皆、ちゃんと命はある。
リーバー班長の言う通り、気絶していただけなんだ。
よかった…っ
「リーバー班長…?此処、は…」
「ミランダの、"時間停止"の中だ」
「ミランダ…?…っその体で、大丈夫なのか…っ」
「マリは…ミランダの傍で様子を見てやっていてくれ」
「あ、ああ…っ」
慌ててミランダさんの傍につくマリを見ながら、班長が辺りを伺う。
ブックマンもバク支部長もロブさんもレニー支部長も傍にいる。
意識を取り戻しているのは、ブックマンだけだけど。
これで少しは、ミランダさんの負担を軽くできるかな…。