第79章 無題Ⅱ
なんて声をかけたらいいのか。
私の乏しい頭じゃ、適格な言葉なんて思いつかない。
…ううん。
きっとないんだろう、適格な言葉なんて。
だって私もそうだから。
どんなに大切に思う人に、どんなに温かい言葉を投げかけられても。
今この胸の内にある痛みは消えやしない。
だから代わりに、私もその目元に指先で触れた。
痛みを堪えるような、そんな顔で耐えるその顔に。
指先は真っ黒に焦げ付いていたから、そんな手で触れるのは躊躇してしまって。
代わりに折り曲げた指の関節で、目尻を撫でた。
「…南…」
「………」
……泣かないで、なんて…言えない、よね…。
……だからきっと班長も、言葉を飲み込んだんだ。
「…悪い」
驚いた顔で私を見下ろしていたリーバー班長は、やがて小さな声でそれだけ呟くと、またぐっと歯を食い縛った。
「とにかく…今はこの現状から脱することが…先だ」
「…え?」
言われて思い出す。
そうだ、周りは真っ白に見える程の強い光の炎の渦だった。
なのに…そういえば熱くない。
ゴウゴウと音はしているから、炎はすぐ近くにあるはず。
こんなに強い光を放ってる炎なら、高温の熱量のはずなのに。
なんで───
「……ミランダ、さん…?」
私と班長を含め、皆倒れている中でただ一人、その場に座り込んでいる細い肩を持つ背中が見えた。
あれは…あの緩いウェーブのかかった茶髪は…ミランダさんだ。
無事だったんだ。
アレンがノアから助け出してたんだ。