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科学班の恋【D.Gray-man】

第79章 無題Ⅱ



「はい」



恐る恐る振り返る。
見えたのは、マービンさんやハスキンさんより高い背丈。
私を見下ろしながらくたびれた白衣の襟元に片手を当てる姿は、一目見てわかる程に疲れていた。

…なんか怒ってはなさそう、かな。



「なんでしょう?」

「ジョニーとタップ見なかったか?あいつらの姿が見当たらないんだが…」

「二人がですか?」



内容も私を咎めるものじゃなかったから、思わずほっとしながら同時に首を傾げる。

ジョニーとタップがいない?
お昼で出てる訳でもないし、出張が入ってる訳でもないし…この書類と化学薬品で埋もれた職場の何処かにいるはずだけど。
つい目で追ったのは、ジョニーとタップのデスク。
でも書類の山が邪魔をして見えないから、自分の席から立って辺りを見渡す。
それでも山のように積み上げられた書類は、デスクに噛り付く他研究員の皆を見事に隠してしまっていた。

……というか…こうして見ると改めて汚い職場だなぁ…。
リナリーが時々「掃除しよう」って提案してくるの、わかる気がする。
でもごめんねリナリー。
掃除する暇なんてないんだよね、仕事に追われ過ぎて。



「自分のデスクには…いないんですか?」

「ああ。だからこうして捜してる。南なら二人がいそうな場所、知ってるかと思ってな」



疲れた様子でリーバー班長が溜息をつく。
ずっと捜してたのかな…頼みたい仕事でもあるのかな?

そんな班長から視線を外して、もう一度辺りを見渡してみる。
何処のデスクも書類の山ができてるから、人の有無確認さえも覚束ない。
この中からジョニー達を見つけるの、大変そうだなぁ…。

…でも、



「……多分、デスクにいないなら、あそこだと思います」

「あそこ?」



少し考えてみる。
二人一緒に姿がないのなら、きっと二人セットで何処かにいるはず。
となれば予想される場所が一つ。

指差したのは広い研究所の隅にある、フラスコやビーカーが所狭しと並ぶ長机。
私も含めてタップ達同期とだけで仕事する時って、あの机使うこと多いんだよね。
部屋の隅だからあまり目立たないし、気を抜いて仕事ができるから。

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