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科学班の恋【D.Gray-man】

第78章 灰色の世界



「……南?」






弱い力で引き寄せられる。
促されるままに頭を寄せれば、顔は南の胸元に触れた。
力の入っていない手がオレの頭を抱きしめる。






「…大丈、夫」






目の前には血で染まった南の服だけ。
顔は見えない。
でもその途切れ途切れの声は、確かに耳に届いた。






「私が…隠しておく、から……大丈夫」






何が大丈夫なのか。
言ってる意味を全て理解することはできなかった。
理解する前に、途切れ途切れのその声に胸が詰まって。
考えることを放棄してしまったから。






「…ッ」






鼻に突く血生臭さ。
肌に触れる血で塗る付いた腕。
あちこちで響く団員達の声が、どこか遠くに感じる。






「…ぅ…ッ」






歯を食い縛る。
ぱたぱたと落ちる滴が、南の服に染み付いていく。
血の滲んだ服に吸い込まれていく透明な滴。






オレの、涙。






「ッふ…っ」






駄目だ、止められない。
小刻みに震える体。
そんなオレの頭を南は抱いたまま、離そうとしなかった。






「っ…ごめ、南……オレ、一回…諦めた」

「……うん」

「南のこと…皆、のこと…死んだんだって…思っちまった」

「…うん」

「ユウは、明確なもん見るまで信じねぇって、そう…っ言ってたのに、オレ…できなくて、」

「…うん」






期待を掛けたら掛けた分だけ、絶望した時に打ちのめされる

それが怖かったんだ

結局は自分を守ってばかりの、オレは弱いガキのまま






「ごめ…ん…っ」






"うん"しか言わない南は、オレの幼稚なガキの心も全部受け入れているようで。
そんな言葉にまた涙は溢れた。










ごめん

守ってやれなくて

沢山怪我させて

痛い思いさせて

守るって言ったのに

そんなオレが一番に諦めて

心に蓋をした

ごめん



ごめん、南










「…いいよ」






遮ったのは、優しい言葉だった。

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