第78章 灰色の世界
「生きてたんさ…?」
驚きで目が逸らせない。
一瞬幻かと思ったくらいに。
それでも興奮したティムキャンピーが縋り付いてんだ。
間違いない。
あれはティムの持ち主である、クロス元帥だ。
「クロス元帥…!?本当に…っ」
「他に誰に見える」
耳元の通信機に手を当てながら、通路から声を張り上げるコムイ。
恐らくその通信機でクロス元帥とも言葉を交わしているんだろう。
「──!」
その顔が更なる驚きに変わる。
今度はなんなんさ。
またレベル4並みのAKUMAが出現したってのはナシだからな。
「リーバー…?」
通信機に手を当てたまま、目を見開いたコムイが口にした名。
「リーバー班長か…!?」
それはクロス元帥の出現以上に、オレの心臓を揺さぶった。
リーバーって…あのリーバーはんちょ?
科学班班長の?
なんでその名を…通信機の向こうにいるんさ?
リーバーなら必ずあの第五研究所にいたはず。
その科学班の人間が生きていた?
エクソシストじゃない、普通の人間が生存していた?
「…ッ」
ドクリと心臓が脈打つ。
「わかった、すぐに消す!もう少し頑張るんだ!」
通信機の向こうとなにか言葉を交わしているらしい。
慌てた様子でコムイが通路の上を駆ける。
「ミランダの消耗を少しでも抑えられるよう、体をできるだけ寄せ合って"時間停止(タイムアウト)"の範囲を小さくするんだ!」
ミランダ?
タイムアウト?
タイムアウトって確か、ミランダのイノセンスの能力だったはず。
包囲した物の周りの時間を止めて、外の時間の間に壁を作る。
それは一種の結界のようなもの。
まさか…それでリーバーは助かったってことさ?