第78章 灰色の世界
✣
「ユウ、見えた…?」
「………見えなかった…」
瓦礫の中に座り込んだまま、お互いに唖然と見上げる大広間の天井。
其処にはぽつんと小さな虫程度の大きさで、空を飛ぶレベル4の姿が見える。
更にその遥か上空には、アレンを抱いて跳んだリナリーの姿。
……全く見えんかった。
絶対にAKUMAの攻撃を喰らったと思ったのに。
…リナリーのダークブーツってあんな速かったっけ。
「ってぇ…」
にしても…体がすげーギシギシする。
なんとか自分の中で意志を固めてアレンの助太刀に行ったはいいものの、結局返り討ちにあってしまった。
オレもユウもイノセンスを所持していれば、まだ結果は違ったかもしんねぇけど…駄目だ。
「…くそ」
やっぱりイノセンスなしじゃまともにさえ戦えない。
「いいぞ…!レベル4と戦り合えてる!」
痛む肩を抑えながら、聞こえた声に顔を上げる。
通路の上。
オレらと同じように天井を見上げながら、歓喜の声を上げるルベリエがいた。
「リナリーの発動は成功だ!アレン・ウォーカーと二人でいけばこのまま…っ」
…確かに。
あの素早いAKUMAの動きにもついていけてるリナリーは、互角にレベル4と戦り合えているようだった。
でもアレンの体は相当ガタがきてるはず。
リナリーだって、イノセンスの発動が上手くいったからっていつまで持続できるかわからない。
まだ未知数のもんだ。
楽観視はできねぇさ。