第78章 灰色の世界
アレン君の言葉で悟る。
あの警報は本当だったんだ。
第五研究所が壊滅したっていう、あの警報は。
アレン君はそう簡単に希望を失ったりしない人。
一度イノセンスをノアに破壊されても、その力を取り戻して生還してきた人だから。
その思いの強さは、同じエクソシストとして戦ってきたから知ってる。
そんな彼が悲痛の表情を浮かべて、そう口にする意味は。
「………」
………本当なんだ。
きっと皆の………"死"は。
"コーヒー飲む人~?"
"あっリナリーだ!"
"はーいっ!"
"はいはい!"
"こっちもー"
最初は兄さん会いたさに、任務時以外はよく顔を出していた科学班の研究室。
そのうちに目の当たりにする職場の忙しさに、なんとなく皆の給仕をするようになった。
そして気付けばそれは、私の日課になっていた。
いつもコーヒーを持っていけば、目の下に隈を作って、それでも元気に手を挙げていた科学班の皆を思い出す。
研究者の皆は私より頭が良くて大人なのに、誰もそんな自分を誇示したりしないで。
寧ろ子供のように、研究成果に喜んだり、床で雑魚寝したり、急に飲み会を開いて潰れるまで騒いだり。
黒の教団を檻のように感じていた幼い私を拘束していた大人達とは、まるで違っていた。
"ねぇ南さん。今日はコーヒーじゃなくて緑茶にしてみたの。南さんの口に合うかと思って。カテキンもカフェインと同じ効果があるんでしょ?"
"リナリー…!なんて優しい…ッ"
"オイ見ろよあれ。やっぱリナリーは天使だなぁ"
"優しいし"
"可愛いし"
"気配り上手だし"
"あれで同じ女だなんてなー…南、頑張れ!"
"煩い黙れそこ"
彼らの周りは酷く人間味があって、いつも温かかった。
一緒にいると、不思議と一緒になって笑ってしまう。
そんな人達だった。