第78章 灰色の世界
すう、とまるで意識が冴えるような感覚だった。
あんなにくらくらしていた頭が、はっきりと覚醒していく。
…力を貸してくれているの?
私のイノセンス。
「兄さん…もう、大丈夫だから」
「リナ…」
「私は、戦える」
起き上がる。
"黒い靴"を纏った足で、しっかりとその場に立って。
辺りを見渡せば、通路の下で瓦礫の山の中倒れている神田とラビが見えた。
アレン君は、白いAKUMAに首を掴まれようとしている。
その体はイノセンスを発動した白いマントの姿のままだったけれど、ピクリとも動いていない。
駄目だ、すぐに助けないと…!
「リナ…!」
ぐっと足に力を入れる。
私を呼ぶその声に、一度だけ振り返って。
「いってきます、兄さん」
大丈夫。
私はちゃんと、笑えてるから。
ダンッ!
そのまま応えは待たずに、地を蹴り跳んだ。
速い。
一蹴りで辿り着いたAKUMAの手の上に降り立つ。
「よくもホームを滅茶苦茶にしたわね」
「あらてか」
近くで見るそのAKUMAは不気味な顔をしていた。
赤ん坊のようで違う。
老人のようで違う。
人に似て、人とは非なる姿。
その口が薄く笑って、手に光を纏う。
撃ち込んでくる…!
「っ!」
咄嗟に傍にあるアレン君の体を抱いて、再び蹴り上げた。
ドウッ!
同時にAKUMAの手から放たれた光の衝撃波が、その場を襲った。