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科学班の恋【D.Gray-man】

第78章 灰色の世界



「ぐ…っ」

「おいモヤシ!」

「!」



口から血を滴らせながら、じりじりとAKUMAに圧されて後退するアレン君の体。
それを止めたのは、左右から退魔の剣の柄を握る二つの影。



「踏ん張りやがれ…っ!」

「今はお前しかいねーんさ…っ!」



神田とラビ。
あの二人のイノセンスは今は壊れていて、扱えないはず。
AKUMAと戦う武器を持ってないのに、それでも戦ってる。

…戦ってる。
皆、命を張って戦ってる。

私もあそこに行きたい。

戦わなきゃいけないからじゃない。
戦いたいの。

この手で、大切な人を守る為に。



ドォン…ッ!



強い競り合いの末、衝突したAKUMAから起き上がる爆発。
アレン君達がその爆風に巻き込まれて見えなくなる。



「アレンくん…っ神田くん!ラビ…ッ!」

「ヘブラスカ!リナリーを診るんだ!」



その爆風を避けるように、駆け寄ってきたのはルベリエ長官だった。



「リナ…リー…」



しゅるりと、傍にヘブラスカの髪の毛が舞い降りてくる。
見上げた先には、大きなヘブラスカの顔。
よかった…無事だったんだ、ヘブラスカ。



「ヘブラ…」

「待てコムイ…今…診る…足には触れるな…」



ヘブラスカの髪が真っ赤に染まった私の足首に触れる。
ドクドクと、流れ落ちる血は止まらない。



「飲み込むなんて…リナリー…っ」

「イノセンスが…液体化したんだ、勝手に。まるで"飲め"と言っているように…」

「イノセンスがリナリーの体内に宿ったのかね?どうなんだヘブラスカ!」



ヘブラスカと兄さんとルベリエ長官。
皆の切羽詰まった声が聞こえる。



「血が止まらない…血が…ッ」



…ああ。
兄さんの声が…泣いてる。
私を抱く腕が震えてる。

……泣かないで。
私は大丈夫だよ。

そう言いたいのに。



「は…っ…はぁ…っ」



溢れる血に、急激に奪われていく体温。
短い息をするのがやっとで、上手く笑えなかった。

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