第78章 灰色の世界
俯いた視界に広がる瓦礫の床。
其処に映った自分の足。
視界に映る体のどこもかしこも血だらけで、全部。
それは灰色。
「………」
ぐっと拳を握る。
傷のある手は痛む。
体中どこもギシギシして、上手く動かせない。
世界は灰色。
それでも激しい戦闘の衝撃音はする。
爆風の焦げ付いた臭いもある。
痛む体も、機能する感覚も、変動する心も。
それは全部、オレがまだ生きている証拠だ。
南やジジイを失ったと思っただけで、こうも視界は霞む。
意識して堰き止めていなきゃ、色んなもんがぶちまけられそうになる。
全ては未熟で弱いオレ自身。
でも…そんなオレと出会えてよかったって、南はそう言ってくれたから。
どんなオレだってオレ自身だって、そんなオレを好きだって言ってくれたから。
「…しっかり向き合う覚悟は…まだあるか、わかんねぇけど…」
…捜すから。
南のこと。
例えそれがオレの望む姿をしていなくたって。
ユウが言ったように、ちゃんとこの目で確かめるまで。
怖さはある。
知りたくないって気持ちも残ってる。
でも…例え辿り着く先が"死"であっても、それを拒否しちまったら。
「……南自身を拒否しちまうことになるもんな…」
オレがブックマンとして生きて、初めて手に入れたいと思えた人だから。
…例えどんな形であったって、ちゃんと見つけて、この目で記憶して。
その存在をオレの頭に一生刻み続けてやる。
もう二度と触れることはできないかもしれないけど。
簡単に心は現実を受け入れられないかもしれないけど。
それでも。
オレの中に刻んで、生きていくから。
"情報"として扱うのとは少し違うけど…それならブックマンとして許されるだろ?
「…なぁ、ジジイ」