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科学班の恋【D.Gray-man】

第78章 灰色の世界



無駄に回る自分の頭を、この時ばかりは呪った。
気付かなかったら、こんな思いをすることもなかったのに。

ユウは"死"を覚悟しちゃいなかったって言ったけど…それでも、きっと南は怖がってたんだ。
当たり前だろ。
ノアやAKUMAと戦う術を持っていない南が、抗える方法なんてない。
ましてや無力な子供の姿をしてたってのに。
オレだったらきっと"死"を覚悟する。
教団で働いてノアやAKUMAの恐ろしさは南もよく知ってる。
デンケ村でAKUMAと身近に接触したから尚更。



一人で痛め付けられて、怯えてたんだ。
それでも"生きよう"としてたのか。






「…っ」






言葉にならない。

南を失ったと思った時と同じ。
でもあの時とは違う感情がオレの心を覆い尽くす。

胸が痛い。
苦しい。

あの時は感じなかった痛みが溢れてくる。
息詰まるような感覚に、歯を食い縛る。










南に会いたい。
無力な体で、それでも精一杯抗って生きようとしていた南に。

なんて声をかけたらいいのか、そんなことわかんねぇけど。
でも会って抱きしめたかった。
オレの腕の中は怖くないと、そう言ってた南を。










「……南…っ」






南への想いが溢れれば溢れる程、それが痛みに変わる。

痛い。
苦しい。
息が詰まる。

どうしたらいい。
この動悸を止める術をオレは知らない。










"ありがとう、ラビ"










浮かんだのは、病室で向けてくれた優しいあの笑みだった。










"私…ラビと出会えて、よかったな"










男とか女とか、エクソシストとか科学班とか、恋愛とか友情とか。
そんなもん全部関係なく、真っ直ぐにオレを見て優しい笑みで云ってくれた。

南の言葉。

エクソシストとかブックマンとか、そんなもん関係なくオレ自身を見て云ってくれた。



「…南…」



あの病室のベッドの中で、労わるようにオレの背中を撫でながら"お疲れ様"と言ってくれた時と同じ。

……少しだけ、ほんの少しだけだけど。
気持ちが静まった気がした。

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