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科学班の恋【D.Gray-man】

第78章 灰色の世界



「あいつはただの人間にしちゃしぶとい奴だ。誰かの為に迷わず立とうとする。そういう人間だ」



服を掴んでいたオレの手を、ユウの手が乱暴に掴む。
そのまま鬱陶しそうに引き剥がされた。



「そんな奴が簡単に死ぬかよ」



ユウの顔がまた険しくなる。



「テメェ俺よりあいつのこと知ってんだろ。ならわかんだろうが」



ドォンッ!



衝撃音。
レベル4と対峙してるボロボロのアレンの姿が、通路の上に見えた。



「俺はあいつの死なんて認めねぇ。確実なもんを見るまではな」



吐き捨てるように言い切ると、ユウは背を向けてアレンの元へと向かっていった。
その背中を、オレはすぐに追うことはできなかった。
一気に色んな情報が入り込んで、頭の整理がつかなくて。



「………」



南が…ノアに捕まった?
体と心を痛め付けられたって。
じゃあ怪我したってことさ?

後でオレが聞いた情報は、オレらが方舟から帰還する少し前に南もアジア支部の任務から教団に帰還したことだけだった。
日数的にはそんなに日は経っていない。
それでも南の体に手当ての跡なんてなかったし、あの病室のベッドの中で抱きしめた時もどこか痛がる素振りなんて見せていなかった。






"私も任務先で散々だったからさ…なんとなく気持ちはわかるよ"






…そういや。
思い出したのは、ベッドの中で抱きしめた南が、オレの腕の中で小さくぼやいていた言葉。
あの時は目の前の体に意識が向き過ぎてて、流しちまったけど…ユウが言ったことが本当なら、きっとそのことを言ってたんだ。
そうやって呟けるだけ、南の中では整理できていたことなのか。






"この腕の中も…怖くないんだよ、ね"






こういう時、無駄に記憶力の良い自分の頭を呪ってしまう。

散々だと言った南は、オレの腕の中で噛み締めるようにそう呟いてた。
あの時は意味が全くわからなかった。
オレの腕の中が怖くないなんて、男として見られていないのかと若干複雑にもなった。

…でもそれが、さっきの言葉と直結するなら。






きっとその"怖さ"は、ユウの言ってたノアやAKUMAに対するものだ。

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