第78章 灰色の世界
「オレだって認めたくねぇさ…っジジイが死ぬなんて考えられねぇし。でもいなかったんさ、何処にも。全部"消えてた"」
「テメェの目に映ってなかっただけだろ。それを"消えた"なんて決め付けんじゃねぇ」
呆れたように溜息をつくユウに、流石に抑え切れなくて体は立ち上がっていた。
「じゃあどうしろってんさ!あんな光景見ても希望持てってのかよ!?いもしない亡霊を探し続けろってのかよ!」
衝動のままユウの胸の服を掴む。
だけどコムイの時のように、ユウは困惑気味な表情なんて浮かべなかった。
眉間に皺寄せて、強く睨み返して口を開いて。
「ああ」
短い言葉で、はっきりと肯定した。
「俺なら探す。探し続ける。この目で見てない"死"なんざ認めてやるかよ」
そこに迷いなんて見えない。
そういう信念を元から持ってたかのように、微塵も迷う素振りはなかった。
南と似た色の瞳は真っ暗で何も映していないのに、強い意志が見える程に。
「何…言ってんさ…」
ユウの言ってることはわかる。
でも、心が上手く受け入れられない。
だって…
「無理、さ…そんなん……オレだって呼んだ…」
あんなもん見ちまったら。
「何度も呼んだんさ…ッ」
近付いて声を張り上げれば、強い熱気で喉が焼けるようだった。
それでも呼んだ。
何度も。
返ってきたのは、ぱちぱちと世界が焼ける音だけだった。
「ジジイを…南を、皆…ッ」
ユウの服を掴んだまま項垂れる。
こんな自分が情けない。
ユウみたいに真っ直ぐ強い思いを抱きたいのに、抱けない。
…だってもう限界だった。
胸の奥にある"何か"が溢れないよう、堰き止めて立ってるだけで限界だったんだ。
「じゃあなんでモヤシは生きてる」
その声はオレとは真逆に、落ち着いていた。
いつもは罵声ばっか飛ばす声は、微塵も荒げることなく項垂れるオレの耳に届く。
……アレン…?