第78章 灰色の世界
✣
「───ぅ…くっ…そ…」
ガラ…
痛む上半身をなんとか起こす。
血に濡れた腕が傍の瓦礫に当たって、ガラガラと崩れ落ちた。
この黒の教団に兵士として入り込むようになって、エクソシストとして戦うようになって。
戦場でそれなりに戦ってきた。
死線だってそれなりに越えてきた。
でも今まで戦ってきたAKUMAとは比にならないくらい、そのAKUMAは桁違いの強さを持っていた。
ユウと相手にしたレベル4は呆気なくオレらを薙ぎ払って、とどめを刺すこともせずに何処かに消えた。
粉々に砕かれてしまった武器を放って、なんとか瓦礫に手をついて立ち上がる。
くそ、体中が痛ぇ。
「あいつ…は…」
レベル4は何処行きやがったんさ。
なんとか上げた顔で見渡せば、その発光しているような小さな体はすぐに見つかった。
「リナ…ッ」
大広間の中央にある通路の上。
そこに倒れ込んでいるリナリーの頭を踏み付けている、レベル4の姿が。
まずい…ッ!
「こら、ぼくをみなさい」
一歩間違えれば頭を踏み潰されても可笑しくない状況。
頭を踏み付けたまま冷たく見下ろすレベル4に、反応を示さないリナリーは何かに手を伸ばしているようだった。
その先には…なんさアレ…?
「イノセンス…か?」
遠目ではっきりとは見えなかったけれど、恐らくあの発している光はイノセンスのものだ。
リナリーのダークブーツか。
ってそれより、リナリーを助けねぇと…!
「っ…くそ…ッ!」
踏み出そうとした体は思った以上に力が入らない。
強打した体のあちこちがギシギシと呻る。
なんでもねぇさ、こんくらい…ッ
「…ッ」
南はもっとずっと痛かったはずだ。
どんな逝き方をしたのか、わかんねぇけど。
考えたくもねぇけど。
でもずっとずっとオレより痛かったはずだ。
こんくらいで弱音吐くなよオレ…!