第14章 デンケ村
「一駅前で降りる予定だったんだ…!間違えてた…!」
「私がすぐ気付けばよかったんです。不甲斐無いです…」
「いえ、トマさんは悪くないですから!」
地図を広げて頭を抱える私に、シュンとしたトマさんが頭を下げる。
あんなに確認したのに、ついはしゃいでしまって…私の馬鹿!
「とりあえず一度次の駅で降りて…」
「次の駅への到着は、一時間後です」
ええぇぇえ…っ
トマさんの言葉に、サァッと顔から血の気が退く。
そんな遠回りしてたら夜になってしまう。
「どうしよう…」
「どうしようも何も、やることは一つさ」
「…え?」
急に強風が舞い込む。
バサバサと舞う地図を慌てて掴んで声の主を見れば、列車の窓を全開にして窓際に足を掛けるラビがいた。
「ラビ?何して…っ」
「はい、南さん荷物かけて」
「はい?」
慌てて止めようとすれば、アレンに荷物を手渡される。
「トマさん、一人で掴まれますか?」
「大丈夫です、ウォーカー殿」
さくさくと会話を進める二人を余所に、腰のホルダーから小さなハンマーのような形の鉄槌を取り出すラビ。
くるりと指先で器用に回すと、忽ち手品のように大きくサイズを変えた。
それはラビ専用の対AKUMA武器イノセンス。
…ちょっと待って。
「とりあえず下に降りればいいんだろ」
「ちゃんと着地して下さいね」
「りょーかい」
結構な速さで走ってる列車なのに、迷うことなく窓から外に出たラビが鉄槌の柄を先にして片足をそこに乗せる。
長く伸びた柄に、手をかけるアレンとトマさん。
ち、ちょっと待って。
「南、」
振り返ったラビが、窓の外から手を差し出す。
「掴まれ」
「い…いやいや、」
ちょっと待って下さい。
なんでそんな当たり前に、高い橋の上を高速で走る列車から生身で跳び降りようとしてるんですか。
確かにファインダーより運動神経のない私だけど、全くの運動音痴だとは思ってない。
でもこれは、流石に無理がある。
私はスタントマンじゃありません…!