第14章 デンケ村
「………」
「なんさ?」
「…別に」
じーっと思わずラビを見る。
アレンがいるから、下手なこと言えないし…仕方なく視線を逸らした時だった。
「わ…、」
ガタンゴトンと揺れる列車の窓から、外の景色が目に映る。
いつの間にか高い橋の上を走っていて、広がる鮮やかな光景に目を奪われた。
「うわー、高い…!」
思わず窓辺に手を掛けて外を見る。
橋の高さは結構なもので、下には大きな森が広がっていた。
ずっと教団内で仕事漬けでこんな大自然には縁がなかったから、仕事なのについ嬉しくなる。
「くすくす、」
「?」
窓辺に齧り付いていれば、不意に聞こえる笑い声。
目を向ければ、口元を隠して笑うアレンの姿があった。
「南さん、子供みたいですね。なんだか意外です」
「え?」
「教団では、いつもてきぱき仕事してるイメージだったから」
「そう、かな」
なんだか気恥ずかしくなって、きちんと座り直す。
手持ち無沙汰に頭を掻けば、アレンはにこりと綺麗に笑った。
「可愛いと思いますよ」
嫌味なくさらりと告げられる褒め言葉。
うわあ…よく聞く在り来たりなフレーズなのに、思わずドキリとする。
アレンのことを意識してなくても、こんなふうに言われれば照れもする。
…これか。
アレンが教団内で女性に人気の理由は。
「…あの、」
思わず紳士アレンに感心していると、不意に個人車両のドアが開いた。
顔を覗かせたのは、今回の任務で同行することになったファインダーのトマさん。
「なんですか?」
「私の勘違いでなければ…今回の目的地は、デンケ村という所では…?」
「はい、そうですよ」
頷くアレンに、言い難そうにトマさんがおずおずと窓の外を指差す。
なんだろう?
「デンケ村は、この森の中に存在する村です」
「………」
「………」
「……え?」
えええぇえっ!?