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科学班の恋【D.Gray-man】

第78章 灰色の世界







勝手に震える四肢。
勝手に速まる鼓動。

体が、動かない。



「長官!室長は避難を命じてるのです。我々団員は室長に従いますわ!」



そんな私を抱きしめてくれたのは、婦長だった。
私を守るように抱いて、ルベリエ長官に声を荒げてくれる。



「この黒の教団は教皇の軍です」



なのに怯む様子なんて微塵もなく返される長官の声に、また体は芯の底から震えた。






"逃げることなどできないのだよ、リナリー"






物心のついた頃から、私はもうこの教団にいた。
強制的に連れてこられて、毎日毎日イノセンスとの同調の訓練をさせられた。
兄さんと無理矢理引き離されて、世界の為に戦えと戦場に押し出された。

怖かった。

何度も逃げ出そうとしたけれど、その度に捕まって、いつも最後に私を見下ろして冷たく言い捨てていたのは、このルベリエ長官だった。



「エクソシストは教皇のものなのです」

「この子達を物のように扱うのはやめて下さい!」



婦長の私を抱く腕の力が増す。



「出ていって…!どうかこの部屋から出ていって下さい!!」



その声に偽りなんてない。
本心で、言ってくれてる。
私のことを戦う為の道具じゃなく、人として見てくれている。



「おいで、リナリー。君の進化したイノセンスならレベル4に立ち向かえるかもしれない」



なのに何よりも私の耳に届いたのは、そんな婦長の言葉じゃなくルベリエ長官の言葉だった。
その言葉は私自身が考えついた、唯一自分にできることと同じだったから。

ヘブラスカに手渡している私のイノセンスを、体内に入れてもらう。
もしそれでイノセンスと適合できれば、きっと私は戦える。

教団の皆の為に───…兄さんの為に。

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