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科学班の恋【D.Gray-man】

第78章 灰色の世界



『まず探索班は…』

「聞いたかね?」



指示を出し続けるコムイの声を、無線機のスイッチを切ってルベリエが閉ざす。



「ヘブラスカを囮にするそうだ」



ヘブラスカは"石箱(キューブ)"という特殊なイノセンスの適合者である寄生型の人間。
ただし"人間"だったのはとうの昔で、その特殊なイノセンスの影響故に百年以上も生き続けてる存在。
人間の肉体は捨て、その本体はイノセンスの"石箱"そのものとなった。

彼女の能力はその体内に適合者が不明のイノセンスを保持し、守り続けること。
レベル4のAKUMAがそれを知ってんなら、一番に狙われるのは彼女だ。

ルベリエが囮と称する辺り、恐らくヘブラスカがAKUMAを引き付けている間に皆の撤退を促す。
そういう作戦なんだろう。



「や…っ!」



微かなリナリーの悲鳴にはっと考え込んでた意識が戻る。

バシッと叩き付ける音。
見れば、細いその腕を掴もうとしたルベリエの手をリナリーが振り払っていた。
その顔は顔面蒼白。
微かに息が上がって、過呼吸一歩手前のようにも見える。

明らかな拒絶反応。

…リナリーは幼い頃から黒の教団にいた。
否、教団に"捕まっていた"。
兄であるコムイから引き離されて、イノセンス適合者だからという理由で幼い頃から戦うことを義務付けられた。
そんな小さな子供に"戦場"なんてもんを押し付けたのは、このルベリエ本人。

…リナリーにとって、ルベリエはトラウマの塊みたいなもんだ。



「聞こえたかと聞いているんだ、リナリー・リー!」



怯えるリナリーに容赦なくルベリエの手が伸びる。



「AKUMAがッ!エクソシストが戦うべきものがそこにいると言っているんだ!!」



その両腕を掴んで叫ぶ様に、リナリーは言葉も発せないようだった。
息を呑んでルベリエを凝視して固まっている。
やべぇ。

流石にそんな姿を見て、黙ってなんていられない。
すぐさまルベリエの手を掴んで、リナリーから引き離す。



「………」



鋭く細い目がオレに向いても、構わず睨み返してやった。



「なんだね、その目は。"ブックマンJr."」



中央庁で一番お偉いサンだろうがなんだろうが、怯えてる少女に無理強いさせるなんて気分悪ィ。
それでも男かよ。






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