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科学班の恋【D.Gray-man】

第78章 灰色の世界



「っ…開けろ」

「ラビ?」



立ち上がって扉に手をつく。
あんなに大きな衝撃が起きたのに、扉は変わらず固く閉ざされたままだった。



「開けろよ此処…ッ」



押しても引いてもビクともしない。
自分の非力さを突き付けてくるように。

焦りと苛立ちが増す。

南はどうなったんだ。
ジジイは、アレン達は。
元帥が助けに行くって言っただろ。
ちゃんと助けるって言ったじゃねぇか。



「畜生開けろ!!!」

「ラビ…ッ!」



ガンガンと扉に拳を叩き付ける。

信じねぇからな。
オレは信じない。
自分の目で確かめるまで、絶対に信じてやるもんか。

研究室が壊滅したからって、南達までやられたとは決まってない。
ジジイ達の安否も確認できてないなら、死んだとは決まってない。
死亡確認はされてない。
それならまだ望みはある。

だから。



「開けろって…ッ!」

「ラビ、落ち着いて…!」



だから、



「そんなに殴り付けたら、怪我が増えるでしょう…!」



変わるな、世界。



「怪我より命が大事だろ!」



視界の色が変わっていく。
強い焦燥感に侵されるように、色を失っていく世界。

駄目だ、やめろ。
まだ南を失ったと決まった訳じゃない。

そんな焦燥感を跳ね返すように、止めてくる婦長の手を振り払って声を荒げた。
同じ仲間だろうが。
オレよりずっと強い思いで、教団で働いてんだろ。
そんな仲間が危機的状況なのに、気になんねぇのかよ。



「心配するなら仲間の命を心配しろよ!」










───パンッ!










衝撃が頬を打った。










「貴方だってその"仲間"でしょう…!目の前の怪我人を心配して何が悪いの!」



一瞬何をされたのかわからなくて、言葉を失う。



「命と比べる怪我なんてないわ!落ち着きなさい!!」



頬を打ったのは婦長の手だった。
じんじんと痛みを感じて、沸騰していた思考が止まる。

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