第78章 灰色の世界
「私の言葉はきっと兄さんを責めてた…っ」
やっぱりあの時、ドアの向こう側でコムイは泣いていたのか。
リナリーがコムイを責める意味で言ったんじゃないことは、誰もがわかってる。
それでもこうして心を痛めるのは、きっとお互いを思う強い気持ちがあるから。
「自分が死んでもいいなんて思ってない…!生きたい…兄さんや皆と生きたいよ…っでもその為には戦わないといけないから…ッ私にはそれしかないの…兄さんを悲しませたくなんかないのに…っ」
婦長にしがみ付くリナリーの体が、一層大きく震える。
「イノセンスなんて大っ嫌い…!どうしてこんなに苦しまなくちゃならないの!どうして兄さんを苦しめるの!!!」
オレはこの教団に来てからまだ数年しか経っちゃいねぇけど、こうしてイノセンスに嫌悪感を抱いて叫ぶリナリーを見たのは初めてだった。
オレよりずっとずっと昔から教団に身を置いて、イノセンスと共に生きてきたリナリーだから。
そういうもんは全部とっくに飲み込んでると思ってた。
…そう、"勝手に"思い込んでた。
ヴヴヴ…!
「「「!?」」」
そんなリナリーやオレの思考を遮るように、突如鳴り響く警報。
『第五研究室壊滅、AKUMA研究室外に侵攻しました!』
そこから聞こえてきた報告に、思わず耳を疑った。
『敵は一体、現在レベル4に進化した模様!第五研究室内のエクソシストの安否は把握できません!』
「何…ッ」
ちょっと待てよ。
研究室が壊滅って…エクソシストの安否って、アレンとジジイのことさ?
元帥達が向かったはずなのに。
まさか元帥までやられたっていうんさ?
レベル4なんて…今まで聞いたことがない。
それだけのレベルでも、相手は一体のAKUMAなのに。
それにやられた?
アレン達が?
『繰り返す!AKUMAレベル4が科学班フロアに侵攻中!!』
大体、アレン達の安否も確認できないってんなら…あそこにいた研究員達はどうなったんさ。
エクソシストであるアレン達でさえ、やられたってんなら。
………南、は。
「ッ…!」
どうなったんだ。