第77章 生と死
「く…いかん…っ眩暈でイノセンスとのシンクロが…っ」
それは遠目だったけれど、確かに見た。
同じように"声"にやられたティエドール元帥が、その場に膝をついている所に。
「そこにたくさん"います"ね」
笑った天使のようなAKUMAが、舞い降りた姿を。
満足に動けないティエドール元帥の隣で笑いながら、AKUMAが目を向けているのは沢山の研究員が守られている"抱擁ノ庭"。
其処に向かって握った白い拳を振り上げる。
その拳を叩き付けた衝撃音なんて、聞こえなかった。
それより先に視界は眩い光で遮られたから。
「──ッ!」
きっとあのAKUMAが放ったのは拳一つ。
それでも指一本でアレンの体を吹き飛ばしたその威力は、計り知れないものだった。
「く…ッ!」
「南…っ!?」
咄嗟に倒れ込んだままのリーバー班長の体に覆い被さる。
守れるかなんてわからない。
でも体は咄嗟に、その頭を抱え込んでいた。
驚き呼ぶ班長の声が聞こえて。
瞬間、
───ゴア…ッ!
凄まじい爆風と共に視界は全て眩い光で遮られた。
強い光と
熱と
爆風と
抱えたリーバー班長の体
それが私が肌で感じた最後のもの。
そして全ては真っ白に塗り潰された。