第77章 生と死
✣
「アレ、ン…っ」
遠目でもはっきり見えた、強い衝撃で吹き飛ばされたアレンの体。
心臓がドクドクと嫌な音を立てる。
いくらエクソシストだからって、アレンだって生身の人間。
常人より頑丈なだけで、イノセンスを体内に宿しているだけで、他は私達と変わらない。
何より今のアレンはノアとAKUMAとの戦闘で、ボロボロの体なのに。
「アレン…ッ」
私達の為に戦って戦って。
その体を酷使しても戦い続けてくれているアレン。
そんなアレンに胸が軋む。
お願い。
死なないで。
そう願うことしかできない自分に、歯を食い縛る。
私にできることとアレンにできることは違う。
そんなこと、わかってるのに。
「大丈夫か、主ら…ッ!」
「ブックマン…」
そこへ駆け付けてくれたのは、ブックマンだった。
「私達より、他の皆を…っ」
血溜りに転がっているリーバー班長やロブさんやバク支部長。
皆、目を瞑ったまま動かない。
生きているのか。
その不安が付き纏う。
「…大丈夫だ、皆息はある」
「ほ、本当…っ?」
ざっと皆を視診してくれたブックマンが、バク支部長の体を支えて頷いた。
よかった…!
「だが急いで手当てせねば───」
そう言って顔を上げたブックマンの表情が止まった。
一点を見上げてその言葉も止まる。
一体何を見ているのか。
つられて視線を上げて、見えたのは。
「…ぁ」
あの、真っ白な不気味なAKUMA。
「まだか…っ」
ブックマンが唇を噛み締め呟く。
「"AKUMA"…この兵器はまだ進化するのか」
進化?
…そういえば。
マービンさんが言っていた…"進化した"って。
あの妊婦のような姿をしたAKUMAの一部を指差して。
「っ──!」
咄嗟に見上げた、妊婦のような像をしたAKUMAの一部。
マービンさんの死に潰された心は、それを見る余裕なんてなかった。
そんな私の目に映ったもの。
それは妊婦のように膨らんだお腹を破かせた、AKUMAの"抜け殻"。
「…あそこから…?」
進化というより、それはまるで生まれたようだった。
あの妊婦のような腹からAKUMAは出現したんだ。