第77章 生と死
拙い子供のような話し方で、発した第一声。
よく聞き取れなかったけど…確か…
レベル…4…って…
「───」
異様な気配は、その生き物の真上からだった。
左目が伝えてくる、禍々しいオーラ。
それを辿るように視線を上げて───
ドク ン
「ぐっ…、う…」
AKUMAであろう、その生き物が抱えている人の魂。
それを目にした瞬間、
「おえ…っげぇ…!」
嘔吐した。
「ッ!?…ア、レ…っ?」
腕の中の南さんの嗚咽が止まる。
「な、に…どうしたの…ッ」
「ぐっ……はっ…は…」
唐突に嘔吐した僕に、驚いて伺ってくる。
だけどそんな南さんに大丈夫だと応える余裕は、今はなかった。
自分の口元を押さえた手がガチガチと震える。
この左眼が映し出すものは、AKUMAに内臓された魂。
AKUMAの材料となる人の魂だ。
AKUMAのレベルが上がるにつれて、その魂の形状も酷さを増す。
その形を満足に保ってられない程、酷い魂を見たこともある。
だけど、これは。
「ぉえ…ッ」
「アレン…ッ!」
酷い。
内臓された魂が…酷過ぎる。
もう見れたものじゃない。
「ぅ…」
───ポタ…
「アレ…ン…?」
「ぐ…」
歯を食い縛る。
それでも目から溢れる涙は止まらなくて、驚き見てくる南さんの姿をぼやけさせた。
「ないてるの?」
問いは南さんからじゃなかった。
音もなくふわりと傍に舞い降りた、その白い小柄な体。
その人のような、奇妙な形を成したものから発せられた問い。
子供のような声で発せられたその言葉は、純粋な問いかけだった。
「っ…?」
僕越しにその存在を目にした南さんの顔が引き攣る。
純粋に問いかけてくる姿に、敵意は感じられない。
それでも瞬時に理解できたんだろう。
この奇妙な生き物が、AKUMAだと。