第77章 生と死
咲き乱れた手足と足元が繋がった状態で、その場に立つ人型に似たダークマターの塊。
それは両手を合わせて祈るような、綺麗な女性の姿をしていた。
───ドク ン
聞こえたのは、生命の息吹。
───ド クン
その妊婦のような形をした、ダークマターの腹の中から。
「オレの所為だ…っオレが…タップを、追いかけて…いったから…っ」
その場に蹲ったまま、涙を零すジョニーの悲痛な声が耳に届く。
自分を責めるジョニーに、そんなことないと声をかける余裕は今の私にはなかった。
目が離せない。
目の前の光景から。
こんなAKUMAの現象は初めてだった。
真っ白に光り輝く妊婦の像のようなダークマターの姿。
見た目は神々しくさえも見えるのに、どこか異様さを感じる気配。
それは恐らく、その生命を感じさせる膨れたお腹から。
マービンさんやハスキンさん達、周りの人間を飲み込んでAKUMAが造り出したもの。
人間を食らってAKUMAが造り出すものなんて───…一つしかない。
それこそ、
───ドクン…ッ
悪魔そのもの。
───ピシッ
卵の殻が破かれるような、そんな音がした。