第77章 生と死
バキン、ボキンと骨を砕く音。
その度に飛び散った赤が、じわじわと飲み込んだ眼球の隙間から零れ落ちる赤が、その場を染めていく。
一目見て"死"に直結する程の大量の血。
「ちょっと…嘘でしょ、バク…」
後方から震える声が届く。
その場に腰を抜かしたように座り込んでいるレニー支部長のもの。
その後ろでは、レニー支部長が結界装置で閉じ込めたんだろう。
結界の壁に囲まれて捕らえられたスカル達の姿があった。
「馬鹿め…AKUMAはお前ら如きに止められる代物ではない…っ」
なのに笑っているのはスカルの方で、怯え震えているのはレニー支部長の方で。
「あれは生きた兵器。だからアクマと名付けたのだ」
結界装置の中から、スカルの嘲笑う声が響く。
それに応えるかのように、マービンさん達を租借するAKUMAの眼球がぐにゃりと変形した。
変形して、ずるりと眼球の隙間から這い出てきたもの。
「な…に、あれ…」
なんて言ったらいいのか、よくわからない。
人のような形をしているそれは、ボコボコと形を変形させながら眼球の隙間から姿を現した。
マービンさん達の血で塗れた、真っ赤な姿で。
ボコボコと幾つもの顔のようなものが現れては引っ込み、手足のようなものが現れては引っ込み。
"何か"に形を変えていく。
やがてまるで咲き乱れるかのように、変形させた手足を足場に。
一つの人型を成した"それ"が、足場の上に"立った"。
立つ、と言うには表現が可笑しいのかもしれない。
不規則に曲がった手足を成したそれと、その場に立つ人型のものと、AKUMAの眼球は全て繋がっていたから。
一つのダークマターから生まれたもの。
それは。
「…妊、婦…?」
まるで腹に子を宿した女性のような形をしていた。