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科学班の恋【D.Gray-man】

第77章 生と死



まさか否定が返ってくるなんて思ってなかったから、戸惑う。



「な、なんで…」

「こんなノアと元帥が戦り合ってる場で、怪我人のお前を放置できるはずないだろ」

「そんなこと、言ってる場合じゃ…ッ」

「俺は助けに行かなかったのに。班長は、捨て身でもお前とタップを助けようとしてた」



私の言葉を遮るように、抱いてくれているマービンさんの手に力がこもる。



「俺はそれができなかった。俺だってお前達の上司なのに…っ」

「マービンさ…」



バク支部長と同じだ。
私を助けられなかったと、顔を歪めて、すまないと言っていたバク支部長と。

でもそれはバク支部長が悪いんじゃない。
…マービンさんだって同じ。
AKUMAという敵わない存在を前にして、抗おうとできる人なんて早々いない。

AKUMAに殺されるくらいなら、無理して私を助けようとしてくれなくたっていい。
みっともなくても、生に縋り付いてでも、生き延びて欲しいと思う。

綺麗事なんかじゃない。
格好付けでもない。
…だって私も、わかるから。

誰だって怖いものは怖い。
恐怖で体が竦んで、情けなくも動けなくなる。
そんな気持ちを、嫌という程私だって感じたから。



「だから今度は、見放さない」

「そんな…マービンさんが、責めることなんて…」

「それだけじゃない」



思わず弁護しようとすれば、真っ直ぐに見てくるその顔から不意に歪みが消えた。



「班長にも頼まれたんだ、しっかり見てないと。俺が班長に怒られる」



浮かんだのは、微かな笑み。



「だから悪いな、南。少し俺に付き合ってくれるか」



え?



「南もジョニーもタップも、全員助ける。今度は誰一人、見放さない」



しっかりとそう告げたマービンさんが、研究室の出入口方面へと体を向ける。
思いがけない言葉に、思わずマービンさんを凝視する。

…それって、



「それから皆で退避だ。それでいいか」

「っ…はいッ」



異論なんてない。
あるはずがない。

そう聞いてくれる言葉に強く頷き返せば、いつもの砕けた顔でマービンさんは笑ってくれた。

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