第77章 生と死
「くそ…ッノアが戻ってきたんだ…!」
ノア?
戻ってきたって…あのルル=ベルと名乗ってたノアのこと?
リーバー班長の言葉に、思わず水の塊を凝視する。
そういえばあのノアは、変身能力を持つと自分で言っていた。
だからあんな風貌にさえも変化できるのか。
「俺らのことはいいから行ってくれ!」
「っ…すみません、すぐ戻ります!」
班長の言葉に、ぐっと唇を噛んだアレンがすぐさまその場から飛躍する。
AKUMAは元帥達の手で、全て破壊されたはず。
となればこの攻防戦の断末魔は、ノアと元帥達によるものなのか。
その音だけでも戦闘の激しさがわかる。
「僕達も急ごう!ジョニーも捜さないと───」
「バク!」
鋭い声で叫んだのは、レニー支部長だった。
「あそこ!」
激しいノアと元帥の戦いで起こった衝撃波が、立ち込めていた悪臭漂うガスを吹き払う。
さっきより広がった視界で、見えたもの。
それは。
「ジョニー…!」
研究室の出入口を塞いだ敵の黒い方舟の壁の前で、スカルに薙ぎ払われて吹き飛ばされるジョニーの姿だった。
やっぱりタップを助けに行ってたんだ。
あんな大怪我を負ってるのに、一人で。
なんて無茶なこと…!
「くそ!助けるぞ!」
「っ…マービンさん…!私のことはいいから、ジョニーを…タップを、助けて…ッ」
走り向かうリーバー班長達の後を追いたいけど、今の私にはそれができない。
抱いてくれているマービンさんの腕を強く掴んで、思いを吐き出す。
ジョニーを助けないと。
タップも、まだあそこにいる複数のスカル達の中に混じってる。
助け出さないと。
避難なんてその後だ。
「ッ…いや、それはできない」
だけど返された言葉は、否定だった。