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科学班の恋【D.Gray-man】

第77章 生と死



「口に何か当てて息をせい。このガスは体に毒じゃ」

「南、これ口元に当ててろ」

「…はい…」



ブックマンの言葉に、リーバー班長が裂いて余った白衣の布を口元に寄せてくれる。
辺りは赤い煙が充満していて、鼻を突く異臭は勿論のこと。
更に視界と音さえも煙によって、遮られているようだった。



「大丈夫ですかっ」



近くにいたAKUMAを一掃してきたアレンが戻ってくる。
まだその目はAKUMAを捉えているのか、左眼を発動させたまま警戒するように辺りを見渡していた。



「リーバーさん達はガスの届かない上の階へ退避を」

「…いや、俺はいい」



退避を促すアレンに、唯一首を横に振ったのはリーバー班長だった。



「改造された部下達が奥のゲートに連れていかれたんだ。まだ…いるかもしれない。止めないと…っ」



…そうだ。
タップも連れていかれていた。

助けないと。
だってまだ生きてる。
スカルの命令で動いてたんだ、きっとまだ助けられる。



「なら僕も行こう」



賛同するように名乗りを上げたのは、バク支部長だった。
強い意志を見せるその目に、頷いた班長がマービンさんに目をやる。



「マービンは、南とジョニーを連れて上の階に避難しててくれ」

「わかりました」



一人では満足に立てない私の体を、支えてくれていたバク支部長の手が離れる。
代わりに背中に手を添えてくれたのは、マービンさん。



「大丈夫か?南」



その目は私を見て、眉を潜めながらも気遣うように優しく声をかけてくれる。
タップとまではいかないけど、マービンさんもその飄々とした態度でよく私をからかっていた人だから。
そんな人の心からの気遣いは、なんだか少し気恥ずかしかった。



「はい…すみません」

「謝るなよ。こういう時くらい、しっかり甘えとけ。ほら、」

「ぅ…はい」



ゆっくりと気遣うように抱き上げてくれるマービンさんに、大人しく身を預ける。

アレンの時もリーバー班長の時も、色々といっぱいいっぱいだったから全く気にしてなかったけど…この歳でこんなふうに抱き上げられるのって、少し照れる。
所謂、姫抱きというか。

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