第76章 終わりの始まり
とにかく何より今は、手当てが先だ。
「リーバーさん達は一箇所に固まっていて下さいッ」
「ああ、わかった」
「リーバー!無事か…!?」
「南…っ」
アレンの言葉に、南から身を離す。
抱いたその体をそっと床に下ろしていると、慌しく二階通路の階段からバク支部長が駆け下りてきた。
その後ろには、ふらふらとだが確かに自分の足で歩いてくるジョニーの姿も見える。
「俺達は無事です。でも南が…」
「ッこれは…酷いな…」
傍に駆け寄ったバク支部長の顔が、南の有り様を映して歪む。
「支部長、南を支えててもらえますか。急いで止血します」
「ああ、わかった」
「南、少し痛むぞ」
「っ…」
頷く南をバク支部長に支えてもらいながら、その真っ赤に染まった腹部に手を伸ばす。
裂かれた腹部のシャツを破って傷口を露にすれば、微かに血生臭さが増す。
清潔な布なんてこの場にはない。
咄嗟に脱いだ白衣の裏地を破り裂いて、その腹部に押し当てる。
「く…ッ」
その上から別の布を巻き付けて縛れば、ぐっと食い縛った南の口から僅かな声が漏れた。
「荒療治で悪い。今はこれしかできないんだ」
「…大丈夫、です」
言えば、僅かに口元に笑みを浮かべて南は首を横に振る。
それが痩せ我慢している姿なんてことは、わかっていた。
破り捨てた腹部のシャツは血を吸い過ぎて滴らせていた。
…明らかに血を流し過ぎている。
急いで輸血しないと。
楽観視なんてできない。