第13章 初任務
「ん、」
「なんですか?これ」
「持ってけ。御守りだ」
「御守り…?」
任務で発つ朝。
一言挨拶をしに科学班の研究室に顔を出せば、リーバー班長が一つのネクタイを差し出してきた。
結構古いなぁ…ボロボロだ。
「俺が入団した時から着けてるネクタイ。聖クリストファーのメダイが、縫い込んであるんだ」
「班長の…」
だからこんなにボロボロなんだ。
差し出されたネクタイを受け取る。
リーバー班長の私物を貰うなんて初めてで、なんだか嬉しくなる。
「うっわ、貧相な御守りっすね!」
「可愛い部下が初出張すんだから、もっと良いモンあげましょうよー。班長ー」
じぃんと静かに感動していると、不意にわらわらと背後から絡むような声がかかった。
うわ、出た。
「なんだお前ら、うざったいな」
「うざいとは酷いっスね」
「俺が初めて任務に同行した時は、こんな御守りくれなかったのになぁ」
「それだけ南が可愛いんスよねー。ねっ班長!」
「なっ…お前らなぁっ」
わらわらと私の肩に手を置いて、声をかけてくる科学班の皆。
ジョニーにタップに、ロブさんにマービンさんに。
「だって寝惚けて南を抱きしめちゃうくらいなんスから」
「ばっ…あれは事故だ事故!」
「南…会社にはな、コンプライアンスっつーもんがあるからな?上司のセクハラは訴えられるんだぞ」
「マービン、お前…!」
ゲラゲラとからかうように笑うタップに、馴れ馴れしく私の肩に肘をかけたマービンさんが顔を近付けてニマニマと笑う。
その度に声を荒げるリーバー班長。
班長が寝惚けて私とソファに倒れ込んだ朝。
結局その腕から抜け出すことができずに、物の見事に出勤した科学班の皆に見つかってしまった。
そして結果、盛大にからかわれた。
まぁ基本からかうのが好きな皆だから…それはそれで、変な誤解されなかったからいいんだけど…。
「いい加減にしろっ!」
標的にされたリーバー班長は、堪らない。