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科学班の恋【D.Gray-man】

第76章 終わりの始まり



「…許さないぞ、お前達」



アレンの目が俺や南、それから周りのAKUMA達を捉えて鋭さを増す。
その口から漏れた声も、普段の優しいアレンを感じさせない程冷たいものだった。



「…南さん、待ってて。今、助ける」



ただ一つ、南に向けた声だけ除いて。



「ラビとちゃんと約束したから」



優しくそう呼びかけるアレンの隣に、天井からブックマンが降り立つ。
見上げた研究室の大きな天井にはアレンが繋げたんだろう、方舟の入口が存在していた。
だが其処から降りてきたのはアレンとブックマンだけ。
他のエクソシスト達は、まだ此処の事態に気付けていないということか。



「ッ!?」

「南!」

「待て!」



急に南を抱えていたAKUMAが逃げるように飛び立つ。



「リーバーさんは其処にいて下さい!」



その後をすぐさま追うアレンの言葉に、駆け出しそうになった足は止まった。
相手はAKUMAだ、アレンの邪魔にならないよう従うしかない。

だが、



「…南…」



遠目だったりAKUMAの腕に囲われたりしていたから、はっきりとはわからなかったけれど。
…あいつの腹部は赤く染まっていた。
きっとタップ達と同様、AKUMAに手傷を負わされているんだ。

早く手当てしないと。
止血してやらないと。
そもそも傷は深いのか。
不安ばかりが募る。



「主は其処から動くでないぞ!」



イノセンスを発動させたブックマンが、俺から離れながら呼びかけてくる。
周りには夥しい程のAKUMAの数があったが、そいつらの目は全てアレンとブックマンに向いていた。
標的になってくれているんだ。



「っ…」



歯を食い縛る。
まだ不安はある。
ノアと大量のAKUMAがいるこの閉ざされた空間で、エクソシスト二人だけで立ち向かえるのか。
いくらアレンが臨界点を突破した、元帥と同等の実力を持っていたとしても。
決して楽観視はできない。

…それでも願わずにはいられなかった。



「頼む、アレン」



南を───…



「…頼む」



…それはアレンが約束と口にした、ラビときっと同じ気持ちだ。






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