第76章 終わりの始まり
「っ…だ、だめ…ッ班長、駄目!」
AKUMAの腕の中で南が暴れる。
南がそういう反応をすることはわかってた。
他人の命に敏感な奴だ、そうやって心を傷付けるだろうってことも。
「タップ…こんな姿に…ッ」
でも俺はどうやら、バク支部長みたいに冷静でいられないらしい。
…悪いな、こんな幼稚な上司で。
でも此処にいる皆、お前も含めて俺の部下なんだ。
そいつらを守るのは俺の務めだろ。
───だから、
「俺の部下をテメェらにやるなんざ冗談じゃねぇ!南を放せ…!」
俺の脳ミソでも代わりに持っていけよ、クソ野郎。
「おほ、"班長"!それは大歓迎だねェ!」
「──!」
一瞬の間だった。
南の隣に立っていたはずの髑髏の顔が、すぐ目の前にあって、既にその固い指の感触は俺の額にあった。
「だ…ッ班長!」
南が叫ぶ。
それを気にかける間もない、本当に一瞬の出来事だった。
「じゃあお前、二体目だ」
「ッ!」
「やめて…!!!」
髑髏の笑い声と南の悲鳴を耳に、反射的に目を瞑って歯を食い縛る。
これで死ぬのか、とか。
タップと同じになるのか、とか。
結局南の顔を歪ませてるじゃねぇか、とか。
そんなことを思う余裕も一切なしに。
───…ブッ…!
それは起きた。
「ア…」
目の前の髑髏の姿が、綺麗に真ん中から盾に割れる。
未だ目に溜まった涙で、僅かに滲んだ先。
髑髏の真上から大剣を突き刺して、器用にその柄に足を乗せて立っている人物。
「……アレン…」
それは見間違いなんかじゃなく。
確かに待ち望んでいた、姿だった。