第76章 終わりの始まり
『我々が奴らに向かって行っても状況は何も変わらん!装置を作る手を止めるな!』
わかってる。
バク支部長の言う通りだ。
『今は少しでも生き残る為の最善を尽くせ!』
「くそっ…くそ…ッ」
死んだらそこで終わりだ。
今俺達ができることは限られてる。
わかってる。
『希望を持て…ッ外に連絡が取れなくても、ウォーカーの左眼があるだろう。彼ならきっと気付いてくれる』
わかってる。
わかってる。
「…ッ」
でも、あいつらは俺の部下なんです。
俺の職員達なんです。
そいつらの命が目の前で奪われてるんです。
「くそ…ッ!」
行き場のない怒りが涙となって溢れる。
その怒りをどこにもぶつけることができなくて、強く握ったドライバーを持つ手はただただ震えた。
「班長…っ」
『耐えるのだ…!』
傍にいたハスキンの声とバク支部長の声が重なる。
イヤホン越しのバク支部長の声は震えていた。
きっと俺と同じに、憤りを感じているんだろう。
何もできない。
目の前で散っていく仲間の命があるのに、それを止める術がない。
まるで生き地獄のようだった。
『…タップ…』
不意にイヤホンに入り込んだ、弱々しいジョニーの声。
───タップ?
『タップ…南も…っバク支部ちょ、あそこ…ッ』
確かに届いたその名前に、思わず目を見開いた。
タップと南?
「何処に…ッ」
「は、班長っあそこ…!」
ロブの声に機材の隙間から目を凝らす。
沢山の血に塗れた広間の中。
「お前さんのミソの出来はどうかな」
「ひ…っ」
髑髏の手を頭に翳された、他部下達と同じく床に寝かされた小柄な姿が見えた。
「南…っ?」
間違いない。
少し此処から距離はあったけど、それは確かに南の姿だった。