第76章 終わりの始まり
『…それで…無事なのは君だけか?』
「…いえ」
重い沈黙を先に破ったのはバク支部長。
…そうだ。
現状況を知らせないと。
「自分以外に五人…今即席ですが、結界装置を作ってます」
『こっちもだ。部品が少なくて性能の悪いのが一台だけだがな』
「似たようなもんです」
ドライバーで機材を解体する手は止めずに報告し合う。
「それより…あれはなんですか?」
『わからん。何か始める気なのかもしれん』
あれ、と言って目を向けた先。
それは研究室の大広間。
「うぁ…」
「い…痛い…」
「…ッ…殺して、くれ…」
其処にはAKUMAにやられた部下達がズラリと床に寝かされていた。
逃げ出せない程にやられた体は血だらけで、それでも息をしている。
弱々しく悲鳴を上げる皆の姿に、顔が歪む。
生かさず殺さず。
そんな状態で寝かされている部下達は、一体なんの目的で並ばされているのか。
その中に南やタップ達の姿もあるのか。
この狭い機材の隙間からじゃ、見つけられなかった。
『バク!』
「班長っあれ…ッ」
その時イヤホンの向こうのレニー支部長の声と、傍にいたハスキンの声が重なった。
見れば、ハスキンの目は広間へと向いたまま一点を指差していた。
なんだ?
「此処の研究員共よ。あまり時間ないから早くして」
「ははっ」
「仰せつけ通りに」
広間の中央で指示を出すノアに応えたのは、出入口を塞いだ黒い壁から出てきた謎の髑髏達だった。
顔は髑髏そのものだが、声も発しているし普通に動いている。
新たなAKUMAか?