第76章 終わりの始まり
「使える備品は持ってこい」
「はいっ」
壁に背中を預けて、機材の解体を急いでいると。
『───…ザザ…』
「!」
不意に耳に付けたままのイヤホンに、再び雑音が入った。
『支部…ちょ…オレのヘッドホン……取って…ス…』
この声は───
「ジョニー…?」
途切れ途切れのか細い声だったけれど、それは確かにジョニーの声だった。
「も…もしもしっジョニー、お前かっ?」
「え?」
「ジョニー?」
慌ててイヤホンに手をかけて呼びかける。
ジョニーがいつも付けてる頭のヘッドホンは音楽用機器だが、同時に通信機にもなっている。
外部との連絡は取れなくても、同じ空間にいるジョニーとは繋がることができたらしい。
というか、無事だったのか。
あの怪我でAKUMA達の目から隠れることができたってことか?
『その声…リーバー班長か?』
返答してきたのは、ジョニーじゃなかった。
この声は…バク支部長?
「バク支部長ですか?ジョニーと一緒に?」
『ああ。なんとかAKUMAの手にはかからずに済んだ。レニーと一緒に、研究室の二階通路に隠れてる』
「そうですか…よかった…っ」
バク支部長達が一緒なら、応急手当くらいはしてもらえてるだろう。
そんなジョニーの安否にほっとする。
それと同時にはっとした。
「バク支部長っ其処に南は…南は一緒にいますかっ?」
ジョニーを助けてくれたのなら、その近くにいた南も助け出せているかもしれない。
細い糸のような希望だったけれど、そこに縋り付きたかった。
だけど。
『いや。椎名はAKUMAに捕まってしまって…助けられなかった。…すまん』
返ってきた低く細い声は、どこか頭の隅にあった予想通りのことを口にした。
「……いえ。支部長は悪くないです」
…そうだ。
誰も悪くない。
悪くないけれど…くそ。
行き場のない憤りが、俺の中に渦巻く。