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科学班の恋【D.Gray-man】

第76章 終わりの始まり



「…ッ」



ギリ、と歯を食い縛る。
命に順番なんてつけられない。
此処にいる全員の命の重みは同じだ。

それでも。

脳裏に浮かぶのは南の顔。
最後に見たのは、AKUMAの腕の中だった。

無事なのか。
怪我してないか。
生きているのか。

ざわざわとした不安は付き纏って離れてくれない。



「とにかく今は、自分の命を優先して下さい。俺達までやられたら、外部との連絡も取れなくなる」

「……ああ…」



ロブの言葉に、食い縛った口の力を緩めて息を吐く。
深く何度も息を吐いて、ざわつく心を少しでも落ち着かせようとした。

…落ち着きはしなかった。

広間から聞こえてくる研究員の悲鳴は途絶えない。
そんな中で、落ち着けって方が無理だ。

それでも無理矢理にでも思考を切り替える。

本音は今すぐにでも、此処を飛び出したい。
飛び出して南達の安否を確かめたい。
でもそんなことをすると、同じく隠れているこいつらまで危険に曝される。
…俺個人の思いで、こいつらをそんな目に合わせられない。



「…くそ、」



自分で自分を詰り付けて、耳に取り付けていたイヤホンで外部との接触を図る。



『───ザザ…』



此処にいるノアやAKUMAの所為なのかわからないが、聴こえてくるのは無情な雑音だけだった。
どうやら電波は妨害されているらしい。



「班長…」

「…大丈夫だ。外にはアレンがいる。きっとあの左眼で此処のAKUMAの存在に気付いてくれるはずだ」



大丈夫だなんて思っちゃいないが、それでもロブ達を安心させる為にそんな言葉を吐く。
…とにかく、少しでも俺達にできることを見つけないと。



「…ここの備品は使えるな。解体するぞ」

「え?」

「これだけの機材があれば、結界装置くらいなら作れるだろ」

「成程…っ」



少しでもいい、どうにかAKUMAに抗える力を身に付けておかないと。
もしAKUMA達に隠れているのが見つかったら、此処にいる全員終わりだ。

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