第76章 終わりの始まり

「放せお前ら…！」

「いいえ放しませんッ」

「班長、落ち着いて…ッ」



落ち着いてられるかよ！

ロブ達全員に押さえ込まれているから、どんなに足掻いてもその場から動くことができない。
隠れた機材の隙間から見える、幾つものAKUMAの影。
聞こえるのはそのAKUMAのものと思われる声と、数々の悲鳴。

襲われてるんだ。
この研究室にいる皆が。
俺の部下達が。



「南が…っジョニーやタップ達がいるんだよ！あいつらを助けねぇと…！」



ジョニーはノアの手によって負傷していた。
早く助けて応急処置しねぇと、出血多量で死ぬかもしれない。
南だって。
AKUMAの腕に押し上げられて、人形のように動かなかった体。

何かされたのか。
想像しただけでゾッとする。



「俺はあいつらの上司なんだ！助けねぇと…ッ！」

「俺達もあいつらの上司なんです！あんたと同じだ！」

「ッ！」



強く襟首を掴まれる。
間近に見えたのはマービンの顔。



「此処にいる全員わかってる…ッ気持ちはあんたと同じなんです、班長…ッ」

「俺達にも、南達は大事な部下で…貴方も大事な上司なんですよ、班長…っ」



俺の腕を押さえていたハスキンの声は、僅かに震えていた。



「ここで出ていったら、やられるだけだ…っお願いだから隠れていて下さい…っ」



その押さえてくる手も同様に、僅かに震えていた。

耐えるように。
必死で、自分を押し殺すように。



「…お前ら…」



…そうだ。
こいつらが平気なはずがない。
俺と同じで、この広間で襲われている研究員、皆。
皆と、ずっと一緒に仕事してきたんだ。
同じ飯を食って、同じ時間を過ごして、生きてきたんだ。

平気なはずねぇだろ。



「…っ…悪い…」



くそ。
畜生。

俺にとってもそうだ。
南達もこいつらも皆同じ。
俺にとって、全員大事な俺の部下だ。

その命に順番なんてつけられない。