第13章 初任務
「駄目だ」
「駄目さ」
大量の資料が足下に散らばった、この教団で一番偉い人の部屋。
更に大量の資料が無造作に置かれた、この教団で一番偉い人の机。
ぐちゃぐちゃで汚い其処に平然と座ってコーヒーを啜っているのは、白帽子にローズクロスの付いた白い団服の眼鏡の男性。
この黒の教団で一番偉い人物。
コムイ・リー室長。
その人を前に、腕組みして息ぴったりに否定する。
それは私の上司と同じ任務をこなす仲間として、司令室に呼ばれたリーバー班長とラビだった。
「えー、なんでさ。南くんは教団内でもしっかり働いてくれてるし。そろそろ実践入れてもいいと思うんだけど」
「そろそろ実践ってなんスか。俺ら科学班は、内部の仕事をするのが役目でしょーが」
「そうさ。任務のサポートならファインダーがやってくれるし。科学班の手は要らねぇよ」
口を尖らせてわざとらしく首を傾げるコムイ室長に、険しい顔で首を横に振る二人。
なんで私こんなに反対されてるんだろう…。
「いいじゃないですか。南さんなら、僕がしっかり守りますから」
「ほら、アレンくんもああ言ってるしさ」
「まずそれがおかしいんさ。大体なんで、アレンが南を推薦すんだよ」
「そうだ。科学班なら他にもいんだろ。マービン辺りなら、昔任務に同行した経験もあるし」
うわ、矛先がこっちに向いた。
アレンと一緒にソファに座っていた自分の体を、思わず竦ませる。
だけどアレンはそんな二人の強い視線を喰らっても、どこ吹く風。
まるで臆せず私の隣でにこにこと笑っていた。
なんでこんな状況下にいるのかというと。
今回アレンとラビが向かう任務先では、どうやら科学班の手が必要らしく。
元々コムイ室長も誰か一人、科学班から助っ人として出張させる気だったらしい。
そこで私を推薦したのが、アレン。
二つ返事でOKを出したのが、室長。
そしていざ任務説明にかかろうとした時、盛大に上司ともう一人の任務仲間から反対を喰らってしまった。
そして今に至る。