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科学班の恋【D.Gray-man】

第75章 無題Ⅰ



一瞬にして、アレンの体に纏い表れた白いマント。
イノセンス発動時の、それはアレンの戦闘姿。



「ガ…」

「ッぁ…?」

「グ、ふッ」



そのマントに貫かれたAKUMA達が、満足な悲鳴を上げられないまま崩れ落ちる。
同時に伸ばしていた手を強く掴まれた。
白い布手袋をした、その手に。



「…ありがと…」



項垂れて見えない顔。
でもその口から零れた声はしっかりと、感謝の言葉を成していて。



「…ちゃんと聞こえた」



上がる顔。
確かに見えたのは、こちらを見る銀灰色の目。
私を抱えていたAKUMAを貫いたマントは包み込むように体に回って、そのまま引き寄せられた。



「南さんと、ジョニーの声」



間近に見える顔が、ふわりと微笑む。



「ありがとう、呼んでくれて」



それはよく見せてくれるアレンの優しい笑みとは少し違っていて、柔らかく微笑む顔はあのクリスマスに見せてくれた笑顔と重なった。

…うん。
私、アレンのこの顔好きだなぁ。



「…アレン…」



でも。
嬉しくなるのに、力は入らない。
満足に縋ることもできない腕に、アレンもどうやら気付いたらしく。



「南さん…?」



その顔から笑みが消える。
スコープを浮かべた左眼が、私の顔から腹部に移る。

…あ、顔が歪んだ。
そういう顔は…あんまり、させたくないかも。



「血が…っ」

「ああ、うん…ちょっと流し過ぎた、みたい…」



目に映してしまうと余計に痛くなりそうで、視線は腹部に向けずに苦笑する。

どんな状態なのかわからないけど、AKUMAに抉られた腹部の出血はきっと多い。
だってさっきから満足に体に力が入らないし…腹部は熱くて火傷のように、感覚が麻痺していた。

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